厳しい寒さも和らぎ、春らしい陽気となりました。今年もはや3ヶ月が過ぎ、新年度を迎えて、入学や入社、就任や着任など新しい環境を迎える方も多いことと思います。まん延防止等重点措置も全面解除となり、心機一転、新たなスタートが始まります。そしてもう一つ、市民生活が大きく変わろうとしています。4月1日から成年年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられ、新成人となり大人として扱われることになります。
さて、成年になると何が変わるのか。大きくは様々な契約になります。例えば、アパートを借りる、クレジットカードを作る、ショッピングローンを組む、消費者金融からお金を借りる、携帯電話の契約などです。その他は、国家資格の取得、そして女性が結婚できる年齢が16歳から18歳以上となりました。一方、たばこ、酒、公営ギャンブルはこれまで通り20歳からとなります。このようなことはこれまで、20歳の節目である成人式を迎えて、親や親戚、式典における祝辞や、周りの大人からの助言によって、大人になったことを自覚するものでした。かつて私も、今日からお酒が飲める、競馬ができるなど大人の自由に期待を寄せると同時に、責任を負うという自覚を持ったことを覚えています。
なぜ今、このような法改正をする必要があるのか。法務省によると、近年、公職選挙法等の選挙権年齢などが18歳に定められるなどとし、国政上の重要事項の判断に参加してもうための政策が進められてきたとのことから、市民生活における基本法である民法においても、18歳以上を大人として扱うべきではないかと議論されるようになったようです。しかし私は、成年年齢引き下げを先に、その次に選挙権年齢を引き下げるなど、法改正の順番が逆であったのではないかと思います。
選挙権年齢の引き下げは2016年に施行されました。少子高齢化が進むなかで、若い世代に社会の担い手であることを意識してもらい、政治にも関与してもらいたいという理由からです。そして今回の成年年齢の引き下げは、親の同意を得なくても、自分の意思で様々な契約ができるようになり、売買契約を中心にあらゆる責任を負うこととなります。現行、消費者契約法の取消権によって不当な勧誘や契約条項による契約は取り消すことができますが、自分の意思による契約は一方的に取り消すことはできません。
例えば、社会問題となっているスマホゲームの課金などはどうでしょうか。ゲームに夢中になるあまり青天井での高額課金、そして欲しい物があれば、ローンやクレジット払いなどで簡単に手に入るなど、過大な借入れによる多重債務となることが懸念されます。
本来であれば、このような実生活を通して社会の仕組み知り、生活環境に慣れてから大人としての自覚を持ち、その上で、日本のあり方を決める政治参加を促すべきであると思います。突然明日から大人だよというのはあまりにも唐突すぎです。安易に契約を交わすとトラブルに巻き込まれる可能性があり、契約に関する知識や社会経験の少ない若者を狙う悪質な事業者もいます。消費者トラブルの相談窓口であるホットライン「188」がありますが、成年年齢の引下げに向けた環境整備が大きな課題であると思います。