最近、走行中の電車内による事件が相次ぎ、不安と恐怖をひろげています。
先月31日、京王線の電車内で殺傷事件が発生し、17人の方が負傷を負いました。また、今月6日には、東西線の車内で千枚通しのような工具を取り出し、警察官が出動する騒ぎが発生。そして8日には、熊本県で走行中の九州新幹線で男が火をつけるという放課未遂事件も発生しました。このように危険と隣り合わせの日々が続く中、身を守る安全対策が喫緊の課題となっています。

報道では車内における警備の強化、乗車前の手荷物検査など、密室となる電車内での防犯対策が急がれています。同様に、子どもたちにおいても安全対策が必要です。例えば、学校にはスマホを持っていくことはできませんが、部活動など、学校以外の出先において、親が緊急時に連絡がとれるようにスマホを持たせるなど子どもたちの安全対策も見直す必要があります。

しかし、こうした安全面だけの対策には限界があり、根本的な解決とはなりません。身を守る安全対策と同時に、同じような事件を繰り返さない、模倣犯を生み出さない社会を作ることが最も重要であると私は思います。

事件を起こした犯人が語るのは、「死にたかった」、「死刑になりたかった」など、孤独で行き場もなく、将来への絶望感などから、自暴自棄になっている心理的背景が伺えます。犯した罪は決して許されるものでなく、極刑をもって罪を償うべきですが、犯罪を未然に防ぐことができれば、被害者、加害者のどちらも生み出しません。そのような社会を実現するためには、自暴自棄などになった人を受け入れる社会、そして、決心した時に立ち直れる社会が必要であると思います。

社会生活は常に乱高下の連続です。上がったり、下がったり、時には失敗、大失敗する時もあります。私も失敗の連続でこれまで何度も辛酸を舐めてきました。そんな時に、いつでもやり直しができる、そして、いつでも受け入れてくれる、後押しをしてくれる場が必要ですが、近年、急速に広がる格差の中、自己責任という言葉が一人歩きし、孤独、孤立問題を加速させています。

そこで、誰もが何度も社会復帰ができる環境が必要です。社会人の学び直しのリカレント教育をはじめ、本市においても、働きたくても働けない、住む所がないなど、さまざまな事情で経済的にお困りの方に向けた、専門の相談員がどのような支援が必要かを一緒に考え、寄り添いながら解決に向けた支援生活困窮者自立支援などもあります。人生を一度踏み外したとしても、やり直しができる社会、誰もが立ち直れる環境、そして、困った時には支え合う共生社会の実現に向けた取り組みこそ、今最も求められていると思います。