薬をもらうには、医師の診察と処方箋の発行が必要です。(医師法20条)
77歳の義父は白内障治療のため、毎月、八木が谷から船橋駅まで電車で通院し、薬の処方と経過観察を受けています。高齢者にとって、この通院の負担は大きく、同じような悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。病院での待ち時間も大きな負担となります。初診以外の、薬の受け取りや経過観察をオンライン診療で行っているところもあるようです。
船橋市の小室町(人口約6700人)では、最寄りの病院まで約4キロ離れており、医療機関のない地域である無医地区に等しい状況です。この問題を改善するため、私はオンライン診療の導入を議会で提案してきました。コロナ禍で規制緩和されたオンライン診療は、医療のデジタル化が進む中で需要が見込まれるという答弁がありました。その上で今回、群馬県が同様の課題を抱える地域で、公民館などを活用したオンライン診療のモデル事業を実施したことを知り、先週、群馬県を訪問し担当者から話を伺いました。
オンライン診療の流れは次の通りです。まず、へき地に住む患者が自宅から近くの公民館に向かいます。公民館では、補助員が付き添いのもと、オンライン聴診器(通常の聴診器と同様に患者の胸や背中に当てて音を拾い、その音をデジタルデータに変換して送信する)や血圧計などの機器を用いて体温や血圧を測り、オンラインで医師の診察を受けます。診察後、医師は処方箋を発行し、薬剤師と連絡を取って服薬指導を行います。薬剤師は薬局からオンラインで対応し、配送者が薬を患者の自宅まで届けます。今回は、地域の見守り活動や、比較的日中が空いているという理由から、新聞配達員の方が配送を担当しました。代金は配送者が立て替え、薬を届けた際に患者から受け取ります。
オンライン診療は、通院困難な患者や医師の負担軽減、病院の混雑緩和に役立ち、特に交通の不便な地域の高齢者にとって有効です。しかし、群馬県の事例にもあるように、対面診療を完全に置き換えるものではなく、補完的な役割を担います。初診は原則対面診療で行い、オンライン診療は医師の判断で柔軟に対応することが望ましいと考えられています。
オンライン診療には、正確な情報の伝達、デジタル機器の操作、個人情報保護などの課題はありますが、災害時には有効な手段となり得ます。例えば、公民館にオンライン診療設備を設けることで、一次避難所としての機能に加え、緊急時の医療提供が可能になります。また、薬局との連携による処方薬や日用品の配達サービスは、買い物弱者への支援にもつながります。
船橋市は、小室町などの医療機関がない地域や交通不便地域を抱え、高齢化率が24%に達し、北部地域では30%を超えています。高齢化が進む本市において、オンライン診療のモデル事業の実施を検討する必要があります。