最近のニュースを見ていると、殺人や強盗、性犯罪といった痛ましい事件、いわゆる重要犯罪が、毎日のように報道されていますが、事件を起こした加害者に注目が集まりがちです。しかしその陰では、被害者やそのご家族が、身体的な怪我や精神的な苦痛に加え、収入の減少や治療費といった経済的な負担も強いられています。加害者の再犯防止策などが取り上げられることもありますが、被害者への支援については、あまり報道されていないのが現状です。

実際に、令和6年度の法務省の矯正・更生保護関連予算は約2663億円であるのに対して、警察庁の犯罪被害者支援予算は約23億円でした。つまり、加害者関連予算に対して犯罪被害者支援の予算はわずか1%の予算となります。加害者の更生も必要ですが、それ以上に、被害に遭われ、精神的にも経済的にも大きな負担に襲われる当事者や、その家族などに、被害の回復を図る支援をするべきです。

船橋市は4月1日から船橋市犯罪被害者等支援条例を施行しました。この条例は犯罪被害者等基本法に基づき、犯罪被害に遭われた方やその家族、遺族が置かれている状況に応じた適切な支援を受けられるようにするものです。被害を受けた時から平穏な生活を取り戻せるまでの間、途切れることなく必要な援助を提供することを目的としています。

船橋市犯罪被害者等支援事業は、犯罪被害に遭われた市民やそのご家族を対象に、被害の内容に応じた経済的支援を行っています。亡くなられた方のご遺族への30万円、けがの度合いに応じて重傷10万円、軽傷5万円、性犯罪被害者には5万円〜10万円の見舞金が支給されます。また、生活面では家事援助や食事配達、子どもの一時保育、介護サービスの費用として3万円〜7万円、住居の引越しや修繕には最大20万円(2回まで)、法律相談費用として最大1万円(2回まで)、裁判への出席や捜査機関への協力が必要な方への交通費5万円の支援を行っています。

支援を受けるには、犯罪発生時に船橋市民であること、被害後1年以内に申請することが条件です。詳しくは犯罪被害者等支援相談窓口(047 401 8054、平日9時〜17時)までお問い合わせください。相談者の個人情報は、本事業に従事する限られた職員で取り扱いますので安心してご相談ください。

犯罪被害は誰にでも起こり得るもので、いつ誰が巻き込まれるかわかりません。被害に遭われた方やそのご家族には、身体や心の傷だけでなく、経済的にも重い負担がのしかかります。万が一、ご自身や身近な人が被害に遭われた際に、「犯罪被害者等支援制度」があるということを頭の片隅に置いておくだけでも、多少の安心につながります。