「お客様は神様」という言葉があります。
この言葉は、昭和36年頃に国民的歌手の三波春夫さんの心構えを語ったことが由来とされています。この言葉の真意について、公式サイトに次のような記載がありました。
「三波本人が生前にインタビューなどでこのフレーズの意味を尋ねられたとき、こう答えておりました。『歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです』」(出典:三波春夫オフィシャルサイトより ※原文ママ)
つまり、三波春夫さんが「お客様は神様です」という言葉に込めたのは、歌い手として最高のパフォーマンスを目指す心構えであり、間違って使われるような「お客様が何を要求しても許される」といった、理不尽な要求を正当化するための意味ではないことが読み取れます。
真剣なプロ意識という真意は、いつから履き違えられてしまったのでしょう。
厚生労働省の調査では、カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラに関する相談があった企業は約3割にのぼり、パワハラなどに次いで重要な問題であることを指摘しています。特に医療や福祉、宿泊や飲食、小売など、人との接触が多い業種では発生率が高い傾向にあります。これを受けて、地方自治体でも対策が進められています。
【厚生労働省】業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
東京都は4月にカスハラ防止条例を施行し、事業者に対して防止措置の努力義務などを課しています。千葉県では、県職員に対するカスハラの定義を定め、対応マニュアルを作成するなどの対策を進めています。船橋市でも昨年4月から、職員の名札表記をフルネームから名字のみに変更しました。職員のプライバシー保護などを目的に、個人情報の検索や悪意ある行為を防止するものです。こうした取り組みは、現場の課題に対応するとともに、社会全体の意識向上にもつながることが期待されます。
そのほかに、カスハラに関連する法規としては、労働契約法のほか、特に悪質なケースでは刑法(脅迫罪、侮辱罪、威力業務妨害罪など)や民法(不法行為)といった法令も適用できます。しかし、こうした法令や条例だけでは根本的な解決は難しいと考えます。
なぜなら、個別の事情や状況があるほか、コミュニケーション上の問題も関わってくるためです。そのため、条例制定や基本方針なども抑止力にはなりますが、もっと本質的なところに目を向けると、サービスを提供する側と受ける側、双方の関係性において、互いの立場に優劣をつけることなく、敬意と思いやりを持つことも大切ではないでしょうか。
今後、市議会においても積極的に取り上げていきたいと思います。