福島第一原子力発電所の敷地内に保管されていた処理水は24日、基準値以下に薄められて海洋放出を開始しました。廃炉を進める上で課題となっていた処理水タンクを減らし、廃炉作業を進めることで、廃炉と復興に向けた大きな一歩となりました。そして最近の報道では、処理水の海洋放出に対して、放出とは無関係な個人や団体に対する嫌がらせが起きており、国内の事業者や自治体に対する脅迫や、現地の大使館や日本人学校に、投石や卵の投げ入れなどが相次いでいます。こうした行為はとても残念であり、冷静な対応が求められます。
先日、東京電力さんより、福島第一原子力発電所のALPS処理水についてお話しを伺いました。ALPS処理水の海洋放出計画は、政府が2021年4月に「海洋放出」を処分方法として選択。本年7月4日、IAEA(国際原子力機関)より放出計画は国際的な安全基準に合致するとの包括報告書が公表。7月7日、原子力規制委員会による処理水放出設備の使用前検査に合格。人や環境への放射線の影響は「無視できるほどわずかだ」と評価。そして廃炉作業が進められる中、燃料デブリの取り出しや廃棄物の保管など、本格的な廃炉作業には敷地の確保が必要。現在、発電所内には1000基以上の処理水タンクがあり、新たなタンク設置は難しく、漏えいリスクや風評被害が不安視される。そのため、安全な廃炉作業を進めるには、処理水の処分とタンクの削減が不可欠です。
また、地元の意見に応えて海洋生物への影響調査も行っています。風評被害を最大限抑制するべく対策を講じた上でもなお、ALPS処理水の放出に伴う風評被害(農林水産物の価格下落や事業の売り上げ減少等)が発生した場合には、その被害も迅速かつ適切に賠償していく方針としています。
環境省のトリチウムの年間処分量(海外との比較)における、世界の主な原子力施設では、フランスのラ・アーグ再処理施設で1京1400兆ベクレル、カナダのダーリントン原発で220兆ベクレル、韓国の古里原発で91兆ベクレル、中国の紅沿河原発で87兆ベクレルです。日本の福島第一原発では、年間に22兆ベクレルのトリチウムを処分する予定です。これは、海外の施設と比べても非常に少ない量です。以上のことから、トリチウムの処分は、安全かつ適切に行われると考えられます。
さらに印象的であったのが、海洋放出に関する市民の声です。
一つ目は、「テレビでは毎回同じように(処理水の)タンクの映像が流されますが、福島がまだ危険な状況だという印象を与えかねません。だからこそ、綺麗になった発電所の映像を見せていただきたいです。」
二つ目は、「福島が完全に元の姿に戻ることは難しいと思いますが、子供たちには福島がより魅力的な未来を持つ場所として描いてほしいです。そのためにも、処理水のタンクなどで象徴される放射能汚染のイメージを早く払拭したいです。」
こうした声は、実際の地元の方々の意見を反映しており、とても深く考えさせられます。ALPS処理水の最新情報は、経済産業省ホームページ、処理水ポータルサイト等でご確認いただけます。