先日、テレビでバブル期の映像を見ました。銀座で一万円札を手に持って、必死でタクシーを捕まえようとしているサラリーマンの方の姿が映っていました。私は、そのような光景を目にしたことはありませんが、上の世代の人から当時の話を聞いたり、この映像を見たりして、当時のタクシーの需要の大きさが感じ取れました。しかし、かつてのバブル期とは対照的に、現在では、全国的に移動困難者の問題が深刻化しています。そのような背景から、タクシー不足を解消するため、4月8日にライドシェアが始まりました。

ライドシェアとは、スマホのアプリなどを通じて乗客とドライバーをマッチングさせるサービスです。交通手段の選択肢が増えるなど、海外では広く普及している一方、日本では、一般人が自家用車を使って有償で他人を運送することは「白タク」行為として、道路運送法の第78条で原則禁止とされています。ただし、第3号の条文にある「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合」に基づき、タクシー会社の管理下で、タクシーが不足する地域や時期、時間帯、料金も同水準に限定して、一般ドライバーによる有償サービスで補うことが例外的に認められ、対象範囲を限定した運用の日本版ライドシェアとなります。

移動の選択肢が増えることへの期待がある一方で、制度の不十分さも目立っています。ライドシェアは、道路運送法の規制を緩和し、普通第二種免許や運行管理者の配置を不要とすることで、これまで違法とされてきた白タク行為を合法化するものです。慎重な検討が必要です。現在、東京や京都などから限定的に始まり、6月にはこれらを検証し、制度の拡大や変動価格制の導入を検討する予定です。

千葉県では、国からの指定を受けて、タクシー営業区域である千葉交通圏に属する千葉市と四街道市で運用開始予定です。しかし、別営業区である京葉圏に属する船橋市においては現在未定です。いずれにしても今後は、全国的にこのような流れになっていくことが予想されますが、利用者の安全を十分に担保できる制度設計が不十分な状態では、先に進めるべきではありません。

ライドシェア開始にあたって河野デジタル相は、「多くの方に一度体験をしていただきたい。その中で変えなければいけないところは、どんどん変えていきたい」と話していましたが、人の命を預かる産業を見切り発車で始めていいのでしょうか。疑問が残ります。

タクシー運転者不足の解消には、二種免許取得費用の助成や人材確保支援予算の拡充、歩合給制度の見直し、自動車教習所への支援、短時間勤務の促進、女性運転手の働きやすい環境づくりなど、多角的な支援策が必要です。これらの総合的な対策により、幅広い層の参入が促され、運転者不足の解消が期待されます。現状の課題を丁寧に見極め、バランスの取れた対策を検討することが重要です。

政府は、目的と手段を履き違えず、見誤ってはなりません。