新年度を迎えて間もないですが、新社会人の早期退職者が増加傾向にあるようです。厚生労働省の統計では、入社後3年以内の離職率は約30%に上るとしています。私が就職氷河期に社会人となった頃は、「石の上にも三年」などと言われ、同じ会社で長く勤めることが美徳とされていました。しかし、現在では終身雇用を望む人も少なくなり、キャリアアップやスキルアップといった前向きな転職を希望するなど、働き方も多様化しつつあります。

【厚生労働省】新規学卒就職者の離職状況

退職理由の多くは、入社前と実際の職場環境や業務内容とのギャップが大きいことが挙げられています。例えば、入社前に完全週休2日制(土日)をうたっていながら、実際は土曜日も仕事があったり、同調圧力から半ば強制的に出勤させられたりするケースがよくあります。よく面接はお見合いとも言われますが、事実と異なる説明は避けるべきでしょう。

また、希望先の配属につけなかったり、上司と反りが合わなかったりと、いわゆる自分で選ぶことのできない「配属ガチャ」や「上司ガチャ」なども主な要因として挙げられています。私も退職を決めたときに、2パターンの上司がいました。一人は、業務上の理由から一方的に退職を阻止しようとする人でした。もう一人の上司は、退職しようと思った理由や現状の不満などを聞いてくれ、職場環境の改善に尽力してくれる前向きな上司でした。そのような上司も選ぶことができなかったので、まさに「上司ガチャ」でした。

退職を考えた際、本来は会社に退職届を提出し、退職の意向を伝えるのが一般的です。法令上、雇用期間に定めがない場合、2週間前に退職の意思を表示すれば、会社側の同意がなくても退職が可能です(民法第627条第1項)。しかし、実際には上司に言いづらく、特にパワハラ気質な上司の場合は、なおさらです。このような状況から、退職代行サービスの利用が過去最高ペースで増加しています。退職代行サービスでは、退職届の提出や貸与品の返却、会社からの連絡取り次ぎなどを代行してくれます。ただし、一般の退職代行サービスでは、有給休暇の取得や残業代の未払い請求などの会社との交渉は、非弁行為となるため行うことができませんので、この点には注意が必要です。

職場環境や処遇の改善など、会社との交渉を有利に進めるために、無料の労働相談を利用することも一つの選択肢です。船橋市が行っている労働に関する相談では、社会保険労務士による無料の労働相談行っています。また、連合のなんでも労働相談では、電話、メール、LINEなどを通じて無料で相談ができます。従来、従業員は組織風土に合わせる必要がありましたが、働き方や人材の多様化が進む現代では、会社側が従業員の多様性に適応していくことが求められています。多様な人材が能力を発揮できるような職場環境の改善に期待したいと思います。